図書館史はどうですか?

図書館史本の比較、司書史、目録史、印刷史、図書館が登場する作品など

国内初の図書館学講座テキスト『図書館史』(和田万吉)

国内初の図書館学講座テキスト『図書館史』(著:和田万吉)。
初版は和田万吉死後の昭和11年、芸艸會発行。

2008年に大正ロマンぽい書体の装丁本で慧文社から復刻されている。
ちなみに Googleブックスで全編読める。(ダウンロードも可) 

図書館史

図書館史

  • 作者:和田 万吉
  • 発売日: 2008/08/18
  • メディア: 単行本
 

和田万吉とは(Wiki) (和田萬吉/わだ・まんきち 1865~1934)
図書館学・書誌学・国文学者。
岐阜県大垣市生まれ。
明治23年(1890)東京帝国大学国文科卒業。
明治29年、同大学助教授兼附属図書館司書官、翌30年には館長就任。
明治43年から欧米各国に留学し、帰国後東京帝国大学文学部教授になる。
大正8年(1919)文学博士取得。
現在の日本図書館協会に当たる日本文庫協会、文部省図書館講習所の設立にも携わり、我が国図書館の発展に尽力する。

 

【目次】(※旧字と当て字は適宜修正してます)

序文
編纂凡例
緒論
第一章 古代の図書館
 第一節 アッシリア帝国の王宮文庫
 第二節 バビロニア王国寺院文庫
 第三節 古エジプトの図書館
 第四節 ギリシアの図書館
 第五節(上) アレクサンドリアの図書館
 第五節(下) アレクサンドリア図書館の焼亡
 第六節 ペルガモンの図書館
 第七節 古ローマの図書館
 第八節 東ローマ帝国の図書館
 第九節 ローマの地方図書館
 第十節 ヘルクラネウムの発掘
 第十一節 ローマ時代のキリスト教会図書館の起源
第二章 中世の図書館
 第一節 寺院文庫の起源および発達
 第二節 各地の寺院文庫
 第三節 寺院文庫の管理事情
  備考一 鎖繋図書の故事を表明する文書
  備考二 ベネディクト派の読書に関する制規
 第四節 アラビア人の文庫事業
第三章 ルネサンスと図書館
 第一節 典籍の復興と図書館
 第二節 活版印刷術の発明
第四章 近世アメリカの図書館
 第一節 北米合衆国の公共図書館運動
  一、図書館運動の発端
  二、公共図書館運動
  三、米国図書館協会
  四、米国図書館運動の諸機関
  五、米国公共図書館の一大特色
 第二節 北米合衆国の主要なる図書館
  一、政府図書館
  二、州立図書館
  三、大学図書館
  四、会員組織図書館
  五、寄付の図書館
  六、学会図書館
  七、一般公共図書館
   備考一 現代米国図書館概況
   備考二 州立、郡立、学校および特殊図書館の一班
 第三節 南北アメリカ各国の図書館
  一、カナダの図書館
  二、アルゼンチンの図書館
  三、ブラジルの図書館
  四、チリの図書館
  五、ペルーの図書館
  六、ウルグアイの図書館
  七、キューバの図書館
  八、メキシコの図書館
第五章 欧州の近世図書館
 第一節 英国の公共図書館運動
 第二節 英国の各種図書館
  一、政府の図書館
  二、大学および専門学校図書館
  三、大聖堂および教会図書館
  四、寄付図書館
  五、学会その他の図書館
  六、会員組織図書館
  七、クラブ図書館
  八、市立図書館
 第三節 フランスの図書館
  一、政府の図書館
  二、大学図書館
  三、学会図書館
  四、公共図書館
 第四節 ドイツの図書館
  一、政府図書館
  二、大学図書館
   補、ドイツの学術図書館の統制
  三、ドイツにおける無料公共図書館
  四、特殊の図書館
 第五節 中欧およびスイスの図書館
  一、オーストリアの図書館
  二、ハンガリーの図書館
  三、チェコスロヴァキアの図書館
  四、スイスの図書館
 第六節 南欧の図書館
  一、イタリアの図書館
  二、国立図書館
  三、教皇庁文庫
  四、大学図書館
  五、名文庫および寺院文庫
  六、市町村立図書館
  七、スペインの図書館
  八、ポルトガルの図書館
 第七節 ベルギー、オランダ、および北欧の図書館
  一、ベルギーの図書館
  二、オランダの図書館
  三、デンマークの図書館
  四、スウェーデンの図書館
  五、ノルウェーの図書館
  六、フィンランドの図書館
 第八節 ソ連邦ポーランド、バルカンの図書館
  一、ソヴィエト連邦の図書館
  二、ソ連邦の大図書館
  三、ポーランドの図書館
  四、バルカン半島の図書館
第六章 アジア、アフリカ、オーストラリアの図書館
 第一節 アジア州の図書館
  一、中華民国の図書館
  二、シャムの図書館
  三、インドシナの図書館
  四、インドの図書館
  五、オランダ領インドの図書館
  六、フィリピンの図書館
  七、パレスチナの図書館
 第二節 アフリカ州の図書館
  一、南アフリカ連邦の図書館
  二、エジプトの図書館
 第三節 オーストラリアの図書館
索引
文献抄

目次を見ての通り、日本図書館史は載ってない。
最終ページの文献抄を見ていると、英文圏の図書館史本を参考にしていることがわかる。
まだ国内で図書館史研究が発展していなかった状況が垣間見える。

冒頭の編纂凡例に本書が刊行に至った経緯が書いてある。

要約すると、

和田(万吉)先生が文部省図書館講習所で十数年の間講義していた図書館史は、貴重な文献であるが、(当時は)ノートのまま行われて誤り伝える点も多く、国内にこの種の図書が皆無である状態なので、上梓の必要を切実に感じ、遺族のご厚意で先生直筆の稿本借用が許されたので、今まで教えを受けたものが先生の記念のため出版した。

著者は和田万吉であるが、実際の編者は弥吉光長らであると推測される。